オーバードーズ(以下、OD)って聞いたことがありますか?簡単にいえば「薬を大量にのむ行為」。日本語でいえば「過剰服薬」と呼ばれ、精神疾患の方がやることの多いです。理由は様々ですが、多くの場合「自暴自棄」になってやることが多い。
今回はこのODをなぜやりたくなるのか。そして、なぜやってはいけないのかを説明していこうともいます。
やってはいけない理由
なぜ、やってはいけないか?理由は簡単です。「あなたの身体を壊すから」この一文にかぎります。なにもいいことがない。だから、やってはいけないのです。
つらい出来事や耐えられない現状におかれ、自暴自棄になってやる人が多いです。ですから、「自分の身体を傷つけてなにが悪い」とおっしゃる人がいます。そういう人は、以下の内容をしっかり読んでから、もう一度考え直してみてください。
なぜやりたくなるのか
なんにもないのにODをやる人はいません。必ず原因があり以下の3つに分けられます。
- 重要性の再認識
- 現実世界への絶望
- 苦痛からの逃避
- 快楽をえる娯楽
では、詳しく説明していきます。
重要性の再認識
これは、自分に自信がない人が自分の価値を確認するためにやるODです。
- 無価値だといわれ続けた人
- ネグレクトなど無関心の中で育った人
- 失敗しかしたことがない人
などが多く、自分の価値に疑問を抱いている人たちです。
ODすることで助けてもらう。「助けてもらえる=自分には価値がある」と確認している形になります。
苦痛からの逃避
現在の状況がツラすぎて絶望しているため全てを終わらせようと考えている人がするODです。生きているより死んだほうがまし。と強くおもっているため、薬を大量にのんで全てを終わりにしようとしています。
- うつ病がうまいこと治らない
- 強烈ないじめにあっている
- 信じられないパワハラをする上司から逃げられない
などなど、人によって理由は様々です。ですが、多くの場合は苦しさによって
- 視野が狭まっている
- 思考が固まっている
- 改善方法を知らない
になっている状態がおおい。こういう状態に陥りそうな人には、そうなる前に支援が届くようにしたいというのが僕の夢です。
快楽をえる娯楽
これは、ODを快楽、楽しみの一部としてやる人たちです。そんな人いるのか?と思うほどビックリな理由ですが、こういう人は存在します。
このような人たちは大量にのむというよりは「規定量よりおおめに飲む」という感じでODをします。だから、誰にも気づかれないことが多いです。しかも、不正入手している人が多いです。正直なはなし、こういう風にやっているやからは許せませんね。薬をなんだと思っているんだか。信じられないです。
ただ、この記事を読みに来てくれる人の中には、まずいないでしょう。そういう人は、調べたりしないですからね。
薬というものについて
ODをしてしまう理由がわかったところで、次は薬というものについて学んでいきましょう。今では処方箋がなくてもドラックストアで手軽に薬を買うことができるので身近なものになりました。
薬を買うのには理由がありますよね。
- 風邪を治すため
- 頭痛を鎮めるため
- 鼻炎を抑えるため
などなど、問題となる症状を緩和させたり治したりするために薬を購入し服薬します。
病院で処方してもらうのでも一緒ですね。困っている症状や苦しんでいる状態を緩和するために処方されます。うつ病患者でしたら
- 抗うつ薬
- 三環系抗うつ薬
- 四環系抗うつ薬
- SSRI
- SNRI
- NaSSa
- 抗不安薬
- 抗精神病薬
- 睡眠薬
などが処方されていますね。それぞれの効用に関しては別記事にまとめますが、どれも困った症状を緩和させる効果があります。
ただ、薬ってどのように効くかってあまりわかりませんよね。のめば効果がでる。それくらいにしか普通は考えません。私もそうでした。ただ、長期的に薬を服薬する人やODをしてしまう人は、薬がどういうものかをしっかりと学んでおく必要があります。
薬はピンポイントに効くわけではない
まず、薬というのはピンポイントで効くものではありません。胃薬だからといって胃にだけ聞くわけではないのです。正式にいうなら「適正な容量用法を守って服薬することにより、”主に”胃にとって良い効果が現れるもの」が胃薬の正式な説明です。
この「主に」というのが重要です。なぜなら、薬というのは「体全体に影響を及ぼすもの」だからです。
薬を飲むと起こること
薬が体全体に影響を及ぼすものというものを詳しく説明しましょう。
わかりやすく、今回は飲み薬をたとえて話をすすめます。薬が効果を表すまでにたどる経路は以下です。
- 口から服薬
- 食道をとおって胃に入る。
- 胃で分解され、小腸におくられます。
(クスリの種類によっては胃では分解されないものもあります)
(胃で吸収される薬もあります) - 小腸で吸収され血液にはいります。
- 肝臓におくられ必要な形に代謝されます
- 血液に交じって体中をめぐります。
- 血液中の薬の濃度が、ある一定値を超えると効果があらわれます。
- 身体を巡った後は肝臓に戻ります
- 肝臓、もしくは腎臓により血液から薬が抜かれます。
- 尿や大便などから排出されます。
おおくの薬はこのような経路をたどるんですね。見てわかるとおり薬は体全体にいきわたるんです。ですから、胃薬だろうと頭痛薬だろうと体全身に薬はまわるんですね。
薬が効果を発揮する血液中の濃度のことを血中濃度とよびますが、これはそれぞれの薬で決まっています。その決まった血中濃度に達しなければ十分な効果はあらわれず、血中濃度が高すぎれば効果が出すぎたり、他の場所で効果が出てしまうんですね。
だから、用法容量を守りましょうといわれるのです。
胃薬もODするとどうなるかわからない
このように用法容量をまもった使い方をすることで血中濃度は保たれます。それを超えてしまえば、違う結果があらわれるんですね。ですから胃薬だから大丈夫なんて理屈は通らないわけです。
この血中濃度なら胃薬として使えるけど、それを超えたら違う現象が起きるかもしれない。それが胃薬です。ですから、必要以上に飲むのはいけません。身体に必要といわれるビタミンですら、摂取しすぎは毒になりえます。ですから薬は尚更なんですよ。
ODにより体に起こること
薬が身体に効く流れがわかったところで、次はODをしたときにどういう風になるかを説明しましょう。
副作用
まずは、副作用がおきます。ODをすることで血中濃度がかなり高くなります。そうなると、本来効いてほしくない部分にも薬の効果があらわれ始めます。これが副作用です。
副作用は良いものはありませんから、嫌な思いをするでしょう。また、薬というのは副作用がないものはほぼありません。必ずといっていいほど副作用があります。
ですから、薬を使うときにはデメリットとメリットを天秤にかけます。デメリットを考慮してもメリットが欲しいというときに使うのが薬なんですね。これを知らないでメリットしかないと思っていると痛い目をみます。
肝臓と腎臓の打撃
次に問題なのが内臓の損傷です。特に打撃を受けるのが
- 肝臓
- 腎臓
です。この二つは、薬を分解したり、ろ過したりする部分であり薬の影響が一番大きくでる部分です。ODをすることにより化学物質が大量に入ってきます。そのため、処理しきれない化学物質に押しつぶされるようになるんです。
処理しても処理しても薬が減らないため、肝臓や腎臓は疲弊し本来の力を出せなくなる。結果、薬剤や体に悪影響をおよぼす悪いものまでが体の外に出せなくなります。こうなれば体調が悪くなるだけです。
また、胃や腸も打撃をうけます。薬は化学物質ですから必要以上に投与すると胃や腸の負担も増えます。結果、疲弊し機能を失っていくのです。
病院で行われるODへの対応処置
上記のような状態を少しでも食い止めるため、ODした患者は病院によって薬を抜かれる処置をほどこされます。これがかなり大変です。ODした患者にとって苦痛がさらに増しますので、しっかりと知っておいてください。
気道確保
気を失ってしまっていた場合、呼吸ができなくなって窒息死してしまうことがあります。それを防ぐために気道を確保します。口から肺まで管をとおすんです。
気を失っているから大丈夫って思うかもしれませんが、気を失っていなくても気道確保する場合はあります。意識はあっても呼吸が止まる可能性があるからです。「管をとおす」と簡単に聞こえるかもしれませんが、大変な苦痛です。
考えてみてください。パイプを口から肺まで入れるんですよ。人の身体って異物が入らないように肺への道はふさぐようになっているんです。それを無理やりこじ開けて管をとおすのです。少し考えただけでも苦痛ですよね。
尿道カテーテルをつける
次は、尿道カテーテルです。おしっこが勝手に出るようにするために尿道口から膀胱まで管をいれるんです。
大量のODした場合、副作用がでないように血中濃度を下げる必要があります。ですから、生理食塩水などを大量に輸液して血液量を増やし、相対的に血中濃度を下げるんですね。
輸液するというのは水分を大量の飲んでいるのと一緒ですから、大量の尿がでます。毎回トイレになんていけませんから、尿道カテーテルをいれて勝手に排出されるようにするんです。
手術などで尿道カテーテルをしたことがある人ならわかりますが痛いです。スムーズに入るように潤滑剤を塗りますが、管はそんなに細くありませんからね。ここでも、苦痛が襲います。
苦しい胃洗浄
そして、なにより苦しい処置はこれ。胃洗浄です。口から管を入れられ、胃に強制的に生理食塩水をいれられます。そして、入れた水ごと中身を吸い上げるんです。強制的に水を入れられるのも苦痛ですが、吸い上げられるのもかなりの苦痛です。吸い上げるというのは掃除機に細いノズルとつけて胃の中に突っ込むものと考えてください。どうですか?もう苦しいなんてもんではありません。
意識が戻ることもあるくらいツラいもので、処置後に「あれはツラかった、、、、」とODしたことを後悔する人も少なくないです。
活性炭で取り除く
薬の種類によっては活性炭を投与して腸から吸収されるのを防ぐ処置もあります。活性炭ってイロイロなものを吸着しますので、吸収される前に活性炭で回収しようとする試みです。
ですが、これって汚れた川や排水路を清掃するのと同じやり方なんです。どうです?気分の良いものではないですよね?
OD治療には激しい苦痛を伴う
このように、ODをするともっとつらい現実がまっています。胃洗浄とか、本当に苦しいですからね。さらに、胃洗浄が間に合わない人は、そのまま経過観察されながら入院することになります。薬によっては胃が痛くなるものもありますからね。さらに、お医者さんや看護師さんのキツイ説教がまっています。あなたの命を本当に大事に思うからこそ、とっても恐ろしい説教をされます。本当にツラいですよ。
しかも、今の薬で死ねることはほぼありません。ODによる自殺者がでたことによって、色々な対策がほどこされています。市販薬なんて何万錠とか飲まないといけません。ですから、大男が死ぬほど食べてやっと致死量と過になるレベルです。そこらの人が飲める量ではありません。
処方箋が必要な強めの薬でも致死量まで準備できることはあまりありません。それほど強力な薬は入院しなければ投与しないことが多いですし、通院の場合でも処方箋数十年分集めないと致死量を飲むことはできません。
結果、胃洗浄や医療関係者からの叱責、はたまた家族からの信頼の失墜がおきます。家族からの信頼されなくなれば、あなたはより孤独感を募らせることになります。これでは、自分の価値の証明をした意味がなくなります。むしろ事態の悪化です。
これでは今以上に辛くなってしまいます。
ODの危険性を知らない人へ
ODの怖さをしらずにいた人、ちょっとくらいなら大丈夫と思っている人は上記をしっかりと読みこんでください。いいことなんて一つもありませんよ。
肝臓が壊れるともっと大変
特に肝臓が壊れるとかなり大変です。肝臓は
- エネルギーを作る作用
- エネルギーをたくわえる作用
- エネルギーをうまく使えるようにする作用
- 体にいらないものを排除する解毒作用
- 体の機能を調整するものを作る作用
など、体が健康であるために必要な機能がたくさんあります。それが、ODによって機能しなくなった場合、元気に日常を遅れることができなくなってしまうんです。これって、自分の人生をより苦しいものにしているだけですよね。
胃や腸が壊れると食を楽しめない
肝臓だけではありません。胃や腸だって異常をきたすようになると問題です。なぜなら、食を楽しめなくなるからです。人間の3大欲求である食欲は重要です。健康な体をつくためにも、楽しむためにも欠かせない。そんな重要な食を楽しめなくなる。こうなっても、人生がツラくなるだけです。何にもいいことがありません。
胃や腸だけではありません。他の部分だって、壊れてしまえば健康的に過ごせなくなる可能性がたくさんあります。ですからODはしてはいけないのです。
家族や周りの人も疲弊する
なにより、自分だけでなく周りの人間が疲弊していきます。そうなれば、価値の証明にもなりませんよね。ただただ苦しいことが増えるだけ。家族にも無力感が広がります。大事に思っていても無力感が強くなるとどうしていいかわからなくなります。結果、いい関係が構築できず孤独感が増してしまうんです。
これでは意味が全くありません。
ODをやめられないという人へ
それでもODをやめられないの。ツラいの。苦しいのって人へは以下の対処法を試して下さい。
- ODする原因を違う方法で解消する
- 薬の管理を他の人に任せる
- 通院間隔をこまめにする
- たまった薬は捨てる
- 安全な薬を選んでもらう
- 自分を理解し認める
それぞれ詳しく説明していきましょう。
ODする原因を違う方法で解消する
そもそもの原因を解消するのが一番いい方法です。
- 死にたくなる原因
- 存在価値を認めてほしい原因
- 自信がない原因
など、ODをしてしまう大元の原因を解消しましょう。
心理療法やカウンセリングは効果的です。自分が求めるレベルを下げるのでもいいでしょうし、必要ないものを手放すという行為も大事です。
苦しい状況だと視野はかなり狭まります。これしか方法はないんだっておもってODしていた人も、冷静に落ち着いて考えると違う選択肢は見えてくるものです。
まずは、原因を追究し、それに効く対策をたくさん探しましょう。それが大事ですよ。
薬の管理を他の人に任せる
ただ、根本の原因を解消するのって時間がかかります。治療中に急に不安定になってODしてしまうって人も少なくないと思います。
理屈はわかっても感情が暴走してしまう。そういう辛さはとてもよくわかります。そういうときは周りの力を借りましょう。薬の管理を他の人にゆだねるのです。
家族でもいいです。入院して医師や看護師などの医療関係にひとに頼むのもいいですね。支援団体などに協力してもらうのもいいでしょう。そうすることで、「ODしたい!!」ってなっても物理的にできなくするのが重要です。
通院間隔をこまめにする
周りに頼れる人がいないよ。。。って人は、通院の間隔を少なくするのも良い手です。通院間隔がこまめになると一度にもらえる薬がすくなくなります。結果、ODすることがすくなくなるんです。
距離が遠いからこまめに通えないという人も、通院にかかる経費とODしてしまう可能性を天秤にかけてみてください。どうしてもODしてしまうくらいなら通院する方がいいですからね。
たまった薬は捨てる
また、長期的に服薬している人は飲み忘れなどで余った薬が手元に残っていると思います。いつか必要になる時がくるって思って残している人もいると思いますが捨てましょう。
捨てないなら、次回の処方を少なくしてもらうんです。そうすることで手持ちの薬を最小限にする。こうすればODすることはできなくなりますよね。
捨てるのって勇気がいりますよね。私もかなりの量がたまったことがあります。週に1回のみ忘れただけでも数年単位だとかなりの量になるでしょう。もったいないな。いつか必要になる。と思ってしまいますが、必要になることはまずありません。処方が変われば必要ないですし、通院を重ねると新しい薬がもらえます。
なにより「余っているんで今回の処方をすくなくしてくれ」って言えませんよね。その気持ちわかりますよ。飲めなかったって伝えれても具体的にどれくらい残っているっていえないと思います。ですから、勇気をもって捨てましょう。必要になることはありません。
安全な薬を選んでもらう
昨今は危険な薬はほとんどありません。それでも医師には「もっとも安全な薬」を優先的に選んでほしい旨は伝えましょう。効果が多少弱くても安全な薬の方がいいですからね。
どうしてもODしてしまうということを医師にもわかってもらっている必要もあります。ですから、事情をちゃんと説明するためにも「もっとも安全な薬を極力えらんでほしい」と伝えるのは効果的です。
自分を理解し認める
そして、何より自分自身のことをもっと知ってください。
- 何でODしてしまうのか
- どういう状況になるとODするのか
- 自分の苦しんでいるものは何か
- 諦められるものは何か
- 大事な部分はなにか
それをわかっていると苦しさやツラさは少しだけ和らいでくるかもしれません。自分の頑張る方向性も明確になるでしょう。ですから、自分のことをもっと深く知ってください。そうすればODなんてしなくても大丈夫だということがわかると思います。
まとめ:ODによって得られるものはない。
いかがですか?ODしても何も得られないということが伝わったと思います。それどころか事態が悪化してしまうだけですね。
あなたが苦しんでいるのは知っています。ODするくらいツラい気持ちで頑張っているのも知っています。ですが、ODすることで失うものが沢山あるということを知っておいて欲しいと思います。
ODしてしまう原因は違う方法で取り除きましょう。色々なアプローチの仕方が存在します。それを一つずつ試していくのが重要です。
何かとうまくいかなくて自暴自棄になってしまうかもしれません。もうダメだと絶望感を感じてしまうかもしれません。もう頑張れないと思うかもしれません。そんなときは、まず休みましょう。休んでから、また考えましょう。
自分がやれる方法を見つけましょう。自分が頑張れるペースを知りましょう。少しずつの変化を喜んでほしい。そうやって、すこしずつ前に進んでいくんです。前にすすめばツラいことは少しずつ小さくなります。苦しいことも少しずつ減っていきます。
そうやって小さい変化を積み重ねることで、ODの原因は解消されていくんです。だから、あきらめないでほしい。ODしないでください。そうすれば、必ずゴールにたどり着きますから。